イベント報告

「若者と仕事―これからの就業スタイルを考える―」2006.9.23@大阪NPOプラザ

東京大学大学院助教授本田由紀氏を招いて開かれたシンポジウムに参加してきました。本田氏は「『ニート』って言うな!」(光文社新書)を共著で出された新進気鋭の教育社会学者。会場にはそんな本田さんの話を聴こうと、市民、学生、若者支援NPOや教師が沢山参加していました。

現代の若者の就業について、皆さんはどのように考えられますか?

キャリアカウンセラーの宮本明子さんにもコメントを寄せて頂きました。
宮本さんのコメントも参考に、ミーティングリポートを読んであなたが感じたことを、ディスカッション Naviで教えてください。
”読む” から ”ディスカッション Navi”へ。
あなたのご意見、お待ちしています。

  ■シンポジスト
研究者の立場から
本田由紀さん
(東京大学大学院情報学環助教授)
  ■シンポジスト
若者の立場から
山口洋典さん
(浄土宗應典院主幹)
  ■コーディネーター
松浦善満
(NPO法人関西こども文化協会代表理事和歌山大学教育学部助教授和歌山大学付属小学校校長)

第1部 話題提供「今、若者が求めている支援とは」

まず、今日の日本は産業構造の変化に伴い、人・物・金の流れがグローバル化され、製造業では人件費の安い国に移動、国内では第3次産業が加速し、サービス業ではコスト削減の波が押し寄せてきている。その状況を背景に、日本はきわめて効率を問われる金融、情報産業とスマイル0円と言われるサービス業との両極化があらわれているという。
この日本の現状をふまえて、まず若者の置かれている状況を仕事・教育・家族の3つの面から分析することにより、現代の若者の生き辛さが浮かび上がってきた。

現代の若者を悩ませる、3つの柱として

1. 仕事・・・多様な仕事形態

そのような産業構造の状況下において、仕事形態は以下の3つから選択しなければならない。
(1)一定の保障はあるが、きわめて厳しい労働時間やノルマが課せられる正規雇用、(2)不安定ではあるが内容は正社員と変わらない厳しい仕事をこなさねばならない非正規雇用(派遣社員など)、(3)同じく非正規雇用で短時間であってもスキルは求められる労働(パート、アルバイトなど)

2. 教育・・・学習レリバンス(関連性)の欠如

日本の教育は、人格形成を目的とし、実生活や仕事とかけ離れた教育内容となっている。また高等教育機関は私立の占める割合が大きく教育費が多大で、家計に負担がのしかかり、余力をもたない家庭が増えている。本来高卒者が就ける仕事が大卒者にまわり、格差が広がっている。

3. 家族・・・世代間のギャップ

右肩上がりの経済状況で育ってきた団塊の世代と、下降状況に置かれているジュニア世代では、大きなギャップがあり、豊かで学歴もある親世代は、若い人が置かれている状況が理解しづらい。若い人は、親と同じような人生は難しいと実感している。
また、家庭の諸資源(経済的・文化的・関係的)にも格差が拡大している。一般的に格差による階層にかかわらず、親子関係が良好な場合、コミュニケーションの能力は増すとみられているが、近隣とのかかわりも薄くなり、家族の中でしか問題を抱え込めない状況にある。


本田さんの話を聞いて、私(23歳、女性)も就職活動をしていた時に様々なことを思い悩んだことを思い出した。自分の就きたい仕事はあるけれど、自分が望むような条件での募集はなかった。インターネットの就職応援サイトは、非正社員・派遣社員の道を促すとも取れる文章が多く、一時は非正社員・アルバイトの道も考えた。
裕福な時代に生まれ育ち「自分のやりたいことを見つけなさい」と教えられてきた私たちは、自分のやりたいことと、自立するという現実的な問題の中で、うまく調和が取れず悩んでしまうのかもしれない。
講演の最後に本田さんは、

人々が自分への自信と他者への敬意をもって生きていくことができる社会を少しずつでも作っていくために、今できることは何だろうと問いかけた。自称「専門高校フェチ」という本田氏は、「農業高校の生徒が人手不足の農家の棚田の稲刈りをした」とか、「工業高校の生徒が耐震構造の検査をボランティアでする」なんていう話を聞くと、目がウルウルしてしまうという。若者が外の世界とつながり、他者の力を借りながら、若者自身の力になるような取り組みが必要なのではないか。若者を「弱く何か欠けている存在」と見るのではなく、「主体的な存在」として頼りにする見方が必要だ。言葉やスローガンではなく実質的な取り組みを、一刻も早く進めねばならない。また学校教育(高等教育)の中で、暫定的なものでよいから、これがあるから大丈夫と生徒が思える専門的なスキルを身につけることが必要だ。そのようなスキルがあれば、生きていくうえでの拠り所、基盤になる

と話した。

第2部 会場との質疑応答から

会場からの質問(若者の居場所支援者):
  正社員になることが大事なのか?フリーターを下降とみるのではなく、違う生き方があってもいいのでは?
本田氏の答え:
  一度フリーターになると、正社員になりにくい状況はなんとかしないといけない。もちろんフリーターで生きていくことも選択の一つだが、成長していける、評価されることは必要だと思う。

会場からの質問(大学4回生):
  今日の本田先生の話を聴いていると、企業社会が求める人材観に自分は当てはまらないのでは?と不安になった。しかしながら、自分はフリーターで生きることもできないのではないかと感じている。今自分に何ができるのか?
本田氏の答え:
  もっとも大事だと思うのは専門的スキル。対人関係が苦手な自分が生き延びることができたのは、データ分析や処理など、教育社会学という大学院で学んできたさまざまなスキルだった。他の人の事例を聞いても、何か核になるスキルがある。どんな分野でも、自分が何かを追求できる、こだわるものがあれば、状況が変わっても柔軟に適応できるのでは。

このシンポジウムを聞きながら、自分の今のこと、1年前の就職活動中のこと、これからのことを考えた。すると自分にも当てはまること、自分は思ったことがなかったけれど、今思えば友達はそのことで悩んでいたのかもしれないと改めて気付いた。社会人になった今だからこそ、今就職活動をしている人に伝えたいこと、たくさんの思いが浮かんできた。今回のこのシンポジウムで語られた内容は、確かに現代の若者のことだ。しかしながら今日語られたことだけが若者の全てではない。若者のそんな一面も私たちの親世代の人に正しく理解してもらい、若者自身も胸をかりながら、精一杯今の自分にできることを実現していけたらと考えた。

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